高校生と大学生のための金曜特別講座

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2005年度冬学期プログラム

2005.10.14

スーパーマンを救え−生物の再生

講師:松田良一(生物学)

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系

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扁形動物プラナリアは切断されても、それぞれの断片から個体を再生します。両生類のイモリも手足を再生できますが、哺乳類は手足を失うと再生できません。なぜでしょうか?ヒトの心臓や中枢神経系も再生できないことがヒトの寿命の限定要因になっているといえます。1995年、映画「スーパーマン」で有名なCristopher Reeve (http://www.crpf.org/)は落馬事故で頚椎第一節を損傷し、全身麻痺に陥りました。以後、彼は9年間にわたり人工呼吸器を使いながら、社会に再生研究の必要性を訴え続け、昨年10月に逝去しました。現在では生物の再生のしくみを知り、ヒトの医療に役立てようとする研究が盛んに行われています。その一端を紹介しましょう。

高校生と大学生のための東大授業ライブ
2005.10.21

イングリッシュ・ガーデンの裏側

講師:安西信一(美学)

東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻

昨今、ガーデニングがブームだが、その主流はイギリス風の庭である。もっとも、イギリスがガーデニング大国とも呼べるものになったのは、十八世紀に従来の幾何学的な庭とは違う、自然風の「風景式庭園」という独自の様式を発明したことによる。この庭が誕生した背景にあったものは何か。本講義では、今も残る一つの名園(ストウ)を例にとり、その美しい庭の成立の裏側に、とりわけ政治的なものが絡んでいたことを浮き彫りにしたい。

高校生と大学生のための東大授業ライブ
2005.10.28

招待講演
「アフリカの飢餓と闘う−マンザナー・プロジェクトの現在」

講師:Gordon H. Sato(生物学)

元カリフォルニア大学サンディエゴ校教授,米国ニューヨーク州W.アルトン・ジョーンズ細胞科学センター名誉所長,A&G製薬取締役社長/マンザナー・プロジェクト代表

Sato博士は、がん研究などの分野で不可欠な無血清培養法を確立された著名な細胞生物学者です。一方、Sato博士ご自身が第二次世界大戦中に日系二世としてカリフォルニアの砂漠地マンザナーに強制収容された経験から、砂漠地のような厳しい環境下でいかにして食料を生産するかという課題「マンザナー・プロジェクト」(http://www.rolexawards.com/laureates/laureate-69-sato.html)に取り組んで来られました。砂漠地での養殖漁業を実現した後、さらに、「飢餓に苦しむ途上国における食糧生産計画と環境保全」を進め、エリトリアにおいて斬新なマングローブ植林技術を開発し、それを利用した家畜生産技術に発展させ、地域住民の生活改善の可能性を示しました。これは、最貧地域における経済的な自立への一方策を具体的に立証したもので、持続可能な社会技術として注目されています。本年度のブループラネット賞受賞のため来日されますので、これを機に特別講演していただきます。Gordon H. Sato博士は日本の次世代層に大きな期待をよせておられます。

高校生と大学生のための東大授業ライブ
2005.11.4

意外と身近な物性物理の世界−物理をたのしむ−

講師:前田京剛(物理学)

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻相関基礎科学系

「物性物理」というとなにやら聞いたことのない世界かもしれないが、半導体とか超伝導というと、言葉くらいは聞いたことがあるという人もいるだろう。その研究成果は今日の我々の生活の奥深くまで入り込んでいる。この意外なほど身近な物性物理の主役は物質中の電子である。この講義では、常に我々の生活との関わりを意識しながら、物質中の電子の奇妙な振舞いを量子論の考え方とともに紹介し、さらには将来のテクノロジーとして注目される超伝導についても紹介したい。

高校生と大学生のための東大授業ライブ
2005.11.11

生物が持つ分子機械の形と働きを見る

講師:栗栖源嗣(生物物理学)

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系

構造生物学は生体高分子の立体構造を決定し、その構造に基づいて生命現象を理解しようという学問分野です。古くはDNAの二重らせん構造の解明、最近では、光合成、呼吸といった基本的な生化学反応から、抗がん剤や抗ウイルス薬開発と言った医薬分野に至るまで、多くの分子レベルでの情報が得られるようになりました。講義では、オングストローム(100億分の1メートル)の世界での研究方法と最近の研究成果について解説します。

高校生と大学生のための東大授業ライブ
2005.11.18

日常生活から歴史をとらえ直す

講師:義江彰夫(歴史学)

東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻

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日常生活の歴史は、高等学校までの教育では、世界史でも日本史でも殆んど扱われていない。しかし、日常生活は政治・経済・文化を中心に語られる人間の歴史の基礎であり、これを見直すことで従来の歴史像は大きく変わってくる。このような観点に立って、日本歴史を素材に日常生活史を検討したい。具体的には、平安時代を対象に日常生活の中心をなす衣・食・住に光をあて、それらがどのように繋がり合い、社会内的問題や国際関係の変化とどのように関連していたかを考える。

2005.12.16

異文化理解の想像力

講師:森山 工(文化人類学)

東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻

異文化を理解するためには、想像力の働きが不可欠です。さまざまなメディア(テクストであれ映像であれ)が提示する紋切り型の異文化像にとらわれきることなく、自分なりの想像力を働かせることが。この講義では、文化人類学という学問の立場から、異文化を理解しようとする過程で何が起こっているのか、具体的な題材をとおして考えます。そして、そこにおいて想像力の働きを阻害する要因があるとすれば、それは何かを考えます。

高校生と大学生のための東大授業ライブ
2006.1.13

生命システムの学習と記憶、淘汰と順応

講師:安田賢二(生物学)

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系

わたしたちは生命システムの理解のために、細胞内に蓄えられている後天的な情報を分析する手法の開発を進めています。細胞内で履歴をもって変化する複雑に絡み合った生化学反応の連鎖からなる細胞の後天的情報は、従来の遺伝子解析のみでは理解することが困難な淘汰、順応、記憶、学習の過程や集団効果などの仕組みを明らかにすることができると考えています。後天的情報を理解するための方法論として、世代をまたがった時系列の変化の追跡と、空間配置がもつ意味の理解を可能にする技術を開発して解析を進めています。この研究によって、われわれは細胞単位での計測による創薬分野での薬効検査、細胞を用いた構成的な臓器再構築など生命の後天的情報に関する知見を深めることができると期待しています。

高校生と大学生のための東大授業ライブ
2006.1.27

「存在の謎」について考える

講師:北川東子(ドイツ思想)

東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻

ドイツの哲学者マルチン・ハイデガーは、存在の哲学者として知られる。私たちが生きて存在しているという事実に哲学者として取り組み、存在のさまざまな側面を綿密に分析し、そして、存在の普遍的な意味を定義しようとした。ハイデガーの「基礎存在論」は、「自分が存在している」という基本的な事実から出発して、文化や歴史のありかたを解明している。ハイデガー思想を手がかりに、今ここに自分が存在していることの謎について考えてみよう。
※画像:「この世界に存在していること」の図解(ハイデガーによる)

高校生と大学生のための東大授業ライブ
2006.2.3

文化人類学とはどんな学問なのか?

講師:伊藤亜人(文化人類学)

東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻

なぜフィールドワークが必要なのか? フィールドワークとはどんなことをするのか? 私自身はどんなフィールドワークをしてきたのか? フィールドでは研究と生活はどのように両立するのか? フィールドワークは現地の人たちにとってどんな意味があるのだろうか? こうした内容を自分の経験をもとに話したい。

2006.2.10

モバイルライフ−携帯端末考

講師:川合 慧(情報)

東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系

インターネット接続のできる携帯電話機によって、個々人がネットに誘われてゆき、常に変化し続けるネット社会の一員となります。これを実現するためには、単なる通信技術だけではなく、機械と人間を知り、その絶妙な組合せをかもしだしてゆくための英知が必要です。そのための基本的な原理と仕組みとを、平易な例などを用いて紹介します。身近な携帯電話器を別の目で見ることができるようになるはずです。

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