東京大学 理学部 数学科・准教授
【講義概要】
高校では微分の後に積分を学びますが,歴史的には積分は微分よりもずっと早くに生まれた概念であり,既に紀元前にその萌芽が見られます. さて,数学には「幾何学」に微分や積分の概念を取り入れた「微分幾何」や「積分幾何」という数学の分野があります.微分幾何学は無限小のレベルでの幾何構造に立脚した幾何学です. 一方,積分幾何学は大域的な量から幾何と解析をつなぐ分野で,約 100 年前に Radon と Funk によって最初の理論が生まれました.この数学原理を CT スキャンに応用して Cormack はノーベル医学賞を受賞しています. この講座では,積分の自然な理解から始め,平面や空間図形といったイメージが捉えやすい幾何学的対象を用いて積分幾何学の雰囲気をお伝えし,時間があれば,積分幾何がどのような形で応用されているかに触れたいと考えています.