哺乳類の進化と妊娠―胎生の不思議―

  1. 日時:2018年2月16日 17時30分から
  2. 場所:東京大学教養学部18号館ホール(詳細はこちら

東京大学 教養学部 統合自然科学科・教授

【講義概要】

 カモノハシなどの単孔類やカンガルーなどの有袋類を除くと、哺乳綱(哺乳類)の最大の特徴は母親の子宮内で胎盤を介して胎児を育てる真胎生にあります。胎盤は子宮に根を生やしたような形で絨毛血管網を作り、母体からの栄養物や酸素を吸収し、老廃物や二酸化炭素を母体側に排出します。母体内では温度が一定に保たれ、外敵に襲われることなく、胎児は安全に成長を続けることができます。しかし、この真胎生には大きな問題があります。哺乳類は免疫系が発達しているため、自己と非自己の区別が厳密で、通常、非自己に対しては強い拒絶反応を起こしてしまうからです。では、母体はなぜ胎盤や胎児を拒絶しないのでしょうか?この拒絶回避機構の発達は、実は未だよく分かっていません。胎生・妊娠現象はどこまで分かっているのか。最近の私たちの研究成果も踏まえて、哺乳類の進化の謎に迫ってみたいと思います。

追記 私は3月末で定年退職いたします。これからも、この「高校生のための金曜特別講座」が末永く続き、日本中に好奇心と学問をする意欲にあふれた高校生がますます増え、彼らを迎える日本の大学がますます元気になることを祈ります。

最後のメッセージ:本を沢山読み、先人の話をよく聞いて考えて下さい。言葉と文字は人類だけが持つDNAによらない世代間の情報伝達手段です。好奇心と言葉と文字の活用により人類は進化を続けます。

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