エスノグラフィーで現代中国を学ぶ

  1. 日時:2014年6月6日 17時30分から
  2. 場所:18号館ホール(詳細はこちら

東京大学 大学院総合文化研究科 国際社会科学専攻

【講義概要】

 本講座で学ぶ「エスノグラフィー」(ethnography)は、参加観察を主とするフィールドワークを通じて、研究者(自己)が研究対象となる人々や集団(他者)と出会い、自己を模索する作業を繰り返すことによって構築されます。つまり、研究者と研究の対象の関係性とそれに関わるコンテクストを常に意識しながら、研究のテーマとなる事象や問題にアプローチする手法です。統計資料や質問紙など量的データを利用する調査とは異なり、研究者自身が調査のツールであり、研究者が自分の感覚を頼りに観察を重ねます。
 このように研究者自身の感覚や価値観が大きく影響するエスノグラフィーは、「科学的な」手法ではないという批判があります。たしかに、予め変数や仮説を設定し、計算式に従ってデータを処理するような方法であれば、誰がやっても同じ回答を導くことができ、データ処理に関する恣意性を排除できます。しかし、調査を進めるにしたがって見出される視野や変数にぴったりとは当てはまらない要素を分析に含めることができず、重要な問題を見逃してしまう可能性があります。エスノグラフィーは研究者が事象全体を包括的にとらえることができ、量的研究とは異なる意義を有しています。
 さあこれから、私が中国の学校、農村や出稼ぎ労働者のコミュニティ、工場で得たエスノグラフィーの経験を、皆さんにご紹介しながら、エスノグラフィーを学んでいきましょう。

【キーワード】

中国、社会調査、質的研究、参与観察

【参考図書】

鴨川 明子 編著 『アジアを学ぶ 海外調査研究の手法』 (勁草書房)
阿古 智子 著 『貧者を喰らう国―中国格差社会からの警告―』 (新潮社)

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