ミッキーマウスのユートピア的身体
――ドイツにおけるディズニー・アニメ受容1927-1945

  1. 日時:2014年4月18日 17時30分から
  2. 場所:18号館ホール(詳細はこちら

東京大学 大学院総合文化研究科 言語情報科学専攻

【講義概要】

 ウォルト・ディズニー・カンパニーが1928年に製作した『蒸気船ウィリー』は、映像と音響を完璧に同期させた初のアニメーション・トーキー映画として大評判を呼び、主人公のミッキーマウスはたちまち世界的な人気を獲得しました。ドイツでも1930年にこの短篇アニメが公開されるやいなやミッキー旋風が巻き起こったのですが、その一方、このネズミのキャラクターは、同時代の人々のあいだにさまざまな議論を引き起こしました。たとえば、ナチスの排外主義的イデオロギーに染まったジャーナリストからは、ミッキーの「アメリカ性」や「黒人性」を糾弾する声があがったほか、「退行」や「サディズム」などの心理学的な観点から大衆への悪影響を懸念する意見も出ました。しかし、他方で、人間と動物、有機物と無機物、自然とテクノロジーなど、本来であれば相容れないはずのもののあいだの境界を軽やかに乗り越え、両者を自由にミックスさせるようなミッキーの越境的でハイブリッドな特徴のうちに、人類が目指すべきユートピア的なヴィジョンを認めるような主張もあらわれたのです。
 この講義では、1920年代後半から40年代にかけてのドイツにおけるディズニー・アニメの受容の歴史を、社会的・政治的なコンテクストに照らしながら、映像や写真とともにたどっていきます。そのうえで、ミッキーマウスをめぐる当時の言説において何が問題になっていたのかを、思想史的な観点から考察したいと思います。

【キーワード】

メディア、映像、身体、テクノロジー

【参考図書】

ヴァルター・ベンヤミン 著、浅井 健二郎 訳 『複製技術時代の芸術作品(「ベンヤミン・コレクション1」所収)』(ちくま学芸文庫)
カルステン・ラクヴァ著、柴田 陽弘/真岩 啓子訳 『ミッキー・マウス:ディズニーとドイツ』(現代思潮新社)
細馬 宏道 著 『ミッキーはなぜ口笛を吹くのか: アニメーションの表現史』(新潮選書)

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