東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系
<講義概要>
光合成を行う生物は光をエネルギーとして生きているため、光を最重要な情報としても認識し、変動する光環境下で効率良く光合成を行うための高度な光応答機構を備えています。光合成と聞くと、緑の葉っぱを思い浮かべる人が多いと思いますが、光合成生物の中には、緑色ではないカラフルな生物がたくさん存在します。我々は吸収されずに反射された光を「色」として認識するので、これらのカラフルな生物の存在は、光合成生物の種類によって、「光の色」に対する好みが異なることを意味するのです。また、光合成にとって光は強ければ良いというものではなく、「光の強さ」にも好みがあるのです。光合成生物には「光の色」や「光の強さ」を見るためのタンパク質が存在し、それらのタンパク質が、自身に今当たっている光を情報として捉え、その光環境下で効率良く光合成する(光を食べる)ために、自身の体を最適化します。そのような巧みな光応答戦略について、分子レベルから細胞レベル、生態レベルまで分かりやすく解説します。
<参考文献>
園池 公毅 著『光合成とはなにか―生命システムを支える力』(講談社ブルーバックス)
東京大学光合成教育研究会 編『光合成の科学』(東京大学出版会)