東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系
<講義概要>
光はエネルギーを持つ。レーザー光を物質に照射すると、レーザー光のエネルギーが熱エネルギーに変換されて物質の温度は上がる、と誰もが考えるでしょう。実際にレーザーメスは、光エネルギーから熱エネルギーへの変換を利用しています。しかし、レーザー光を巧みに利用すると、驚くべきことに原子気体を絶対零度近く(数マイクロケルビン程度、室温の約1億分の1)にまで冷却することができるのです。本講義で紹介するレーザー冷却は、現代物理学における基盤技術の一つであり、実際皆さんが生まれてからのノーベル物理学賞のうち、3回(1997、2001、2012年)はレーザー冷却およびその応用研究に対して授与されています。そんな最先端の研究を支えるレーザー冷却ですが、その基本原理は高校で学ぶ物理の知識で十分理解することができるのです。講義では、レーザー冷却技術の応用として、原子波干渉計による超精密重力測定や137億年(宇宙の年齢)で1秒も狂わない究極の原子時計なども紹介したいと思います。
<参考資料>
「宇宙で最も冷たい物質」(PDFファイル)