東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻
<講義概要>
アメリカのサブプライム問題(不良の住宅ローン)から始まった信用危機が世界中に広まっています。食べ物の世界では、食べられないものが食べ物に化けているということがさまざま起きていて、何を食べたらよいのかよくわからなくなりつつあるとも言えます。「ジャックと豆の木」という話を知っていますか?少年が家の宝の牛を豆一粒に交換してしまったところから、奇想天外な世界が開け、金の卵を産むニワトリや、かわいいお嫁さんまで(?)手にはいるというお話です。「わらしべ長者」のお話も交換の不思議を描いています。交換の世界には魔物が住んでいるというわけです。食べ物でないものが食べ物に化けていたのも交換の世界の出来事ですし、住宅ローンという借金がいつの間にか債権という財産に化けて、世界中で何十兆という規模のビジネスになっているのです。貨幣でものを売買する行為は人間社会にそんなに昔からあったわけではありません。物々交換もそれほど一般的なことであったわけではありません。市場経済は「人間の経済」の中のごく一部に過ぎないのです。経済人類学のテーマを、フィールドワークの成果もあわせて、わかりやすく説明します。