新発見の『ユダの福音書』について

  1. 日時:2008年6月6日 17時30分から
  2. 場所:18号館ホール

東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻地中海・イスラム地域文化大講座

<講義概要>

2006年の春、主要な日刊新聞の大半に「世紀の大発見『ユダの福音書』」という宣伝が掲載されたことを覚えている人が多いでしょう。ユダはイエスの十二弟子の一人であったのに、イエスを売り渡した「裏切り者」というのが新約聖書とキリスト教の常識です。しかし、新発見の『ユダの福音書』では、ユダこそがイエスを最もよく理解した真の弟子であり、イエスをユダヤ教の指導者たちに売り渡したのも、イエスから事前に与えられていた指示を実行したに過ぎないことになっています。その物語の全体が、第二世紀のキリスト教で「異端思想」とされたグノーシス主義による産物です。それはどのような思想なのか、なぜ「裏切り者」が「真の弟子」に変わるのか。そもそも『ユダの福音書』は誰が、何処で、何のために書いたのか、どこまで歴史的に信用できるのか、あるいは、できないのか。最近の研究からお話しします。