言葉の力と科学の力 ― 『フランケンシュタイン』200周年

  1. 日時:2018年11月16日(金) 17時30分から
  2. 場所:東京大学教養学部18号館ホール(詳細はこちら

東京大学 教養学部 教養学科・教授

【講義概要】

「フランケンシュタイン(Frankenstein)」という言葉からどんなイメージが浮かぶでしょうか。生物の断片を繋ぎあわせて造られた人造人間?科学が創り出した恐ろしい「怪物」?このイメージは、現在、芸術、文学、科学、生命倫理などの多くの分野に関わる重要な問題を提起しています。人は生命の創造の領域に関わってよいのか?人を人たらしめるのは何か?

 遺伝子工学などの最先端の科学技術が構想さえされていなかった19世紀前半、まだ20歳のメアリ・シェリーは、この問題をテーマとして小説『フランケンシュタイン――現代のプロメテウス』を1818年に出版しました。現代の「フランケンシュタイン」のイメージは、この小説を源泉としますが、オリジナルの小説では、「フランケンシュタイン」とは、創り出された怪物の名前ではなく、怪物を創った主人公の科学者、ヴィクター・フランケンシュタインの名前であり、まだ20代前半の若い科学者ヴィクターは、世紀の大発見をして生命体を創り出したものの、自分が創り出した人造の生命体に名前を与えることもせずに放置しました。そのために小説の中では様々な悲劇が引き起こされます。

 メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』は、今年、出版200周年を迎え、世界各地で、この小説の現代的意義を考察する催しが行われています。今回の講義では、若者の想像力/創造力を物語の根幹に置くこの小説を、科学の力と言葉の力が小説の中でいかに絡み合い、読者に「人」とは何かという大問題に向き合わせるかに焦点をあてて考察します。

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