単細胞生物「粘菌」から学ぶソフトロボットの自律分散制御

  1. 日時:2016年7月22日 17時30分から
  2. 場所:東京大学教養学部18号館ホール(詳細はこちら

東京大学大学院 大学院情報理工学系研究科 特任講師

【講義概要】

  既存の人工物・組織などのシステムデザインの多くは「中央集権型」であるのに対して、生物は「中央集権型」と「自律分散型」を上手く融合させて機能している。本公演では、自然界のシステムづくりには欠かせない設計思想であるにもかかわらず、今までなおざりにされてきた「自律分散型」のシステムづくりを、最も原初的な生き物である真正粘菌変形体をモデルケースとしてひもとく。真正粘菌変形体とは、柔らかな細胞膜を厚み振動させることでアメーバ運動を行う巨大な単細胞生物である。単細胞生物であるため脳も神経も持たないこの生物は、餌と餌の最短経路を結ぶ、迷路を解くなど驚くほど知的で適応的な振る舞いを示す。このような知的な振る舞いを生み出すために、たった一つの細胞が、どのように環境をセンシングし、判断し、運動しているのだろうか?発表者はこの生物から「自律分散的なシステムづくりの設計論」を抽出し、実際にアメーバ様ソフトロボットを開発することでその妥当性を示してきた。この設計論はヘビロボット、四脚ロボット、さらには講演者が現在取り組んでいるイモムシ型ソフトロボットにも適用できることが示されている。本講演では、これらのロボットを紹介するとともに、これらロボットや設計論がわれわれの生活にどのように変えていくかを考えてみたい。

【キーワード】

生物模倣型ロボット,自律分散システム,softrobotics, アメーバ,イモムシ

【参考図書】

マイクル・クライトン 『プレイ』 (ハヤカワ文庫)
江崎 秀 他 『自己組織化とは何か 第2版―自分で自分を作り上げる驚異の現象とその応用』 (講談社ブルーバックス)

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