死後の生物学

  1. 日時:2016年6月17日 17時30分から
  2. 場所:東京大学教養学部18号館ホール(詳細はこちら

東京大学大学院総合文化研究科 広域科学専攻

【講義概要】

 人生において「生老病死」は最大のテーマである。人は死んだら生き返らない。1789年、イタリアの解剖学者ガルバーニは偶然、解剖したカエルの足に2種類の金属が触れると痙攣することを見つけた。死んだカエルの足が動いたのだ。死者が再び動き出すことはあるのか。1817年、この現象に興味をもった18歳のイギリス人少女メアリー・シェリーは、SF小説の元祖ともいえる「フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメチウス」を書いた。内容は死者を甦らせた科学者フランケンシュタインと生き返った者の苦悩。アイデアは現代の臓器移植や再生医学に通じるとも思える先見的作品だ。しかし、その後、死後変化を正面から扱う学問は法医学や食肉・畜産学以外には現れなかった。私の研究室では「個体の死」と「細胞の死」の違いについて興味を持ち、死んだマウスとラットの体内で起きる様々な生物学的反応について研究を始めた。その結果、死後しばらくは体内で生きている時と似た生物反応が起きていること、あるいは筋肉の病気の中には、生きているうちに死後変化に似たプロセスが起きていることが分かった。

【キーワード】

死,個体死,細胞死

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