中東政治の変動とグローバル・ジハードの行方

  1. 日時:2016年6月3日 17時30分から
  2. 場所:東京大学教養学部18号館ホール(詳細はこちら

東京大学先端科学技術研究センター

【講義概要】

 中東・イスラーム世界の混乱はどうしたら収まるのでしょうか。「イスラーム国」は今後も各地に現れるのでしょうか。

 現在の中東は大きな変動の時期にあります。「国民」と「国家」と「国際秩序」の変化が並行して進み、相互に影響を与える中で、どこかに均衡点を見出すまで混乱は続くでしょう。

 この授業では、政治学やイスラーム思想史のものの見方を用いて、中東の歴史を振り返ってみます。それによって、今の中東がどのような段階にいるのか、次に何が起こるのか、見通してみたいと思います。

 今の中東の国家と社会と国際関係は、百年ほど前にオスマン帝国が崩壊した直後に形成されました。ここでは当時の三つの国際条約・協定を手がかりに、中東の成り立ちを考えてみます。一つはちょうど百年前の1916年5月に英・仏の間で結ばれたサイクス=ピコ協定です。これは世界史の教科書にも載っているので知っている人も多いでしょう。「大国の思惑で中東を分割しようとした」悪名高い密約でもあります。これに「セーブル条約」(1920年)、「ローザンヌ条約」(1923年)を加えて考えてみると、中東の国家はどのような原理で出来上がったのかが明らかになります。

 現在の中東の混乱の中で、百年前ほど前のこの三つの条約・協定によって作られた秩序の限界が露呈しています。「イスラーム国」は、問題の解決策ではありませんが、現在の中東の国家と国際秩序が揺らいだ結果として現れてきたものです。中東を拠点に世界に広がるグローバル・ジハードはどのようなメカニズムで成り立っているのか。それは現在の国家や国際秩序にどのような挑戦を突き付けているのか。授業では順に解き明かしていきます。

【キーワード】

中東,世界史,イスラーム教,国際政治,地域研究

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