死後の生物学・パート2

  1. 日時:2017年2月3日 17時30分から
  2. 場所:東京大学教養学部18号館ホール(詳細はこちら

東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 生命環境科学系

【講義概要】

 この講義は平成28年6月に行った「死後の生物学」の続編です。
 これまで生物学は命ある生き物の構造や機能についての学問であり、生き物が死ぬと、その学問対象から除外される傾向にありました。現行の学習指導要領や高校生物教科書のでも「死」は出てきません。わずかに生態系の物質循環における生物体の腐敗が取り上げられているのみです。「死」は人生の最大関心事の一つなのですが、それは専ら哲学や宗教の対象でした。「死」を科学の対象としてとらえ直すことはできないでしょうか。
 一方、私達の食べ物の多くは死んだ生物体に由来するものです。死後変化の一つである組織融解現象を食品の加工に伝統的に利用してきたともいえます。また、私たちの研究室では筋肉の死後変化と筋疾患や筋の打撲あるいは過剰運動時に生じる筋変性との類似性を見出しています。さらに死後組織における低酸素誘導性因子(HIF)の蓄積も認めています。「死」のプロセスを理解することは「生」をより深く理解することにつながると思われます。その中から長寿や臨死状態からの蘇生につながるヒントも得られるかも知れません。

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