東京工業大学名誉教授
【講義概要】
ネズミの心臓は早く、ゾウのものはゆっくりと打つ。ネズミは短期間で成熟して子を生み、寿命は短い。ゾウはその逆。ネズミは生活のペースが早く、ゾウはすべてにおいてゆっくりとしているのである。生活のペースを動物の時間と考えれば、ネズミの時間とゾウの時間は異なること言っていいだろう。体重当たりのエネルギー消費率を比べると、ネズミの方が格段に大きい。じつはエネルギー消費率と動物の時間の進む早さは比例するという経験則がある。なぜこのような経験則が成り立つのかを考えたい。また、この経験則は、社会生活の時間にも当てはまりそうなのだ。現代社会は、車やコンピュータや携帯電話などという機器を、エネルギーを使用して動かし、結局は時間を早めているのではないだろうか。そのような視点から、環境問題、資源エネルギー問題、さらに少子高齢化の問題について、批判的に眺めてみたい。
【キーワード】
動物の時間、エネルギー消費量、生物とは、現代人の時間
【参考図書】
本川 達雄 著『ゾウの時間 ネズミの時間』(中央公論社)