東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系
【講義概要】
我々に身近な物質は,分子からできている。その大きさは,10億分の1メートル程度と極めて小さい。この小さな分子はどのような形をしているであろうか。分子の形は物質の性質に大きな影響を与えるため,この疑問は科学の重要な問題のひとつである。例えば,水分子H2Oは,酸素原子と水素原子の結合距離が96 pm (1 pm = 10-12 m),結合角が104°の二等辺三角形をしている。このように,水分子の形は正確に知られているが,この極微な形は,どのようにして知ることができたのであろうか。
また,分子は絶えず超高速で運動し,分子の形は絶えず変化している。分子の形が時間とともに変化してゆく様子を観測することで,分子の運動を追跡することができる。このように,分子の形を知ることは,分子の運動を知ることにつながり,さらには物質の性質をよりよく知ることにつながる。
本講義では,分子の形を知る手法の一つである分光学を紹介する。また,最先端の分光法を用いて,フェムト秒(10-15秒),アト秒(10-18秒)といった超高速な分子の運動を調べる方法を紹介する。さらに,非常に強い光を用いることで,このような分子の運動を制御する最新の研究結果を紹介する。
【キーワード】
分子の形,分子の運動,レーザー光,スペクトル,分光学,フェムト秒,アト秒
【参考図書】
廣田榮治,遠藤泰樹 著 「日本化学会編 新化学ライブラリー 分子ーその形とふるまい」(大日本図書)