工学は再生医療の実現のために何をすべきか?

  1. 日時:2015年1月30日 17時30分から
  2. 場所:18号館ホール(詳細はこちら

東京大学生産技術研究所 物質・環境系部門

【講義概要】

iPS細胞のようなステムセル(幹細胞)を細胞源とする再生医療は、臓器移植を超える夢の治療としてばかりでなく、日本の次世代産業としても期待されています。そのプロセスは、大量培養、分離精製、移植組織構築、品質評価、輸送・保存などのステップからなります。社会からの要請に対して迅速に実践的な解を提示すべき工学は、生物学や医学の最新知見を踏まえながらも、産業界とも協力し、上述の各ステップを繋いで一連のプロセスとして稼働させるという任務を負っています。応用化学分野の一つである化学工学は、19世紀に英国で起こり第一次世界大戦の後に米国で体系化が進んできた学問で、物理化学に基礎を置き、熱・物質・運動量の移動と物質の反応の定量的な取り扱いを通じて、例えば石油化学プラントの最適設計を可能としてきました。再生医療分野においては、酸素や栄養素の供給、細胞の代謝に着目した効率的なプロセスを構築することが求められています。講義では、以上の内容を大学での研究の様子も交えながらお話ししたいと思います。

【キーワード】
工学、化学工学、幹細胞、物質輸送、反応、三次元化、酸素、血管

【参考図書】
岩田博夫 著 『生体組織工学―基礎生体工学講座』 産業図書、1995年、241ページ

 本書は京都大学再生医科学研究所現所長の岩田博夫教授が、1995年に執筆したものである。iPS細胞に象徴されるようなその後の最新知見はもちろんカバーされてはいないが、融合的分野である再生医療のための生体組織工学について、それを構成する学問の方法論とその融合活用について、工業化学者の立場から一貫して体系的に述べた良書である。講演者は、再生医療のための組織工学の教科書として未だにこれを超えるものは出ていないと考えており、大学院での講義でも副読本として推薦している。特に、付録で物理化学や化学工学の活用例を豊富に示している点も貴重である。

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