東京大学 大学院総合文化研究科 相関基礎科学系
<講義概要>
私たちが目で見る宇宙は、太陽系の惑星を除くとそのほとんどが恒星の発する光の集まりです。恒星の表面は数千度の高温になっていますから、このような場所では化学結合は切れてしまい、分子は存在できません。しかし双眼鏡や望遠鏡などで注意深く見ると、宇宙には恒星以外の存在も確認できます。ガスや塵が周りの恒星の光を受けて輝いている散光星雲や、銀河の星の光を遮って黒く見える暗黒星雲などです。このような領域では、数多くの分子が存在しています。それらの分子は、マイクロ波領域の電波を出しており、大きなパラボラアンテナを持つ電波望遠鏡で観測することができます。それぞれの分子は特定の周波数の電波を放出していますから、その電波を観測すればどのような分子がどこにどれだけ存在しているかを知ることができます。
ところで分子や塵を含む雲は、やがて収縮して恒星になります。電波望遠鏡による分子の観測は、恒星の生成メカニズムを解明する大きな手がかりを与えてくれます。