東京大学 大学院総合文化研究科 広域科学専攻
<講義概要>
私たちが日頃なにげなく行っていることも、それを「どのようにして」やっているのかを考えると、ちゃんと答えることができない場合が数多くあります。朝起きて鏡を見ながら身支度をする。お茶の時間に仲間たちと会話を楽しむ。夕食後のひと時にテレビドラマを観て過ごす。こうした日常的な活動はあたり前すぎて意識することはありません。しかし、我々は鏡に映っている自分を見て、なぜ自分自身の姿だと判るのでしょうか? 気が置けない友人とのおしゃべりはなぜ楽しいのでしょうか? テレビ映像としての出来事と現実世界での出来事をどう区別しているのでしょうか?こうした素朴な疑問に答えるためには、心がどのように働くのか ―メカニズム― について解明する必要があります。私の研究室では、生まれたばかりの乳児から成人までを対象とした発達認知神経科学的研究を行っています。日常的な認知的機能が「いつ」「どのようにして」可能となるのか、発達プロセスを詳細に研究することで心のメカニズム解明を目指しています。研究には、高密度EEGやNIRS(近赤外分光法)など人間の脳活動を非侵襲かつ低拘束で計測するための装置が用いられます。最近では、母子相互作用場面において母親(父親)と乳幼児がみせる、「教え」「教えられる」メカニズムに着目したペダゴジカル・マシンの開発に着手しました。赤ちゃんを対象とした実証的研究は認知科学の基本問題を解決するだけでなく、多くの情報機器や教育ツールを開発する上でも重要な知見を提供します。
<講師ホームページ>http://ardbeg.c.u-tokyo.ac.jp/