巡る炭素と巡らない炭素 −化学原料としてのバイオマスと石油−

  1. 日時:2012年6月22日 17時30分から
  2. 場所:18号館ホール(詳細はこちら

東京大学 生産技術研究所 サステイナブル材料国際研究センター

<講義概要>

 石油は一度、燃焼や反応により化学的に変換したら、元の石油に戻すことはできません。一方、植物などのバイオマスは、元々、光合成により二酸化炭素から炭素を得ているので、化学変換されても、最終的には二酸化炭素に戻るだけです。化学製品の原料として、一回使いきりの石油より、炭素循環の環に組み込まれたバイオマスの方が、地球環境にとって望ましいのは明らかです。では、バイオマスを原料とする材料の普及が思ったほど進まないのはなぜでしょうか?石油由来の材料と比較して、価格が高く、性能が劣るからでしょうか?答えは否。例えば、合成ゴムでは代替できず、天然ゴムが必須の用途が多くあります。バイオマスの特性を生かせば、石油由来に勝るとも劣らない材料となるのです。化学の目で見ると、石油とバイオマスは全く異なる特性を持っています。現在の工業は、石油のためのシステムにより成立しています。このシステムではバイオマスの特性をうまく引き出すことはできません。バイオマスの特性を理解して、バイオマスのためのシステムを構築する必要があるのです。講義では、石油とバイオマスの化学的特性をわかりやすい言葉で解説し、バイオマス材料の将来性について考えます。

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