音楽史と作品――楽曲はどの様に「音楽史を構成する要素」となるのか

  1. 日時:2011年12月2日 17時30分から
  2. 場所:18号館ホール

東京大学 大学院総合文化研究科 超域文化科学専攻 比較文学比較文化研究室

<講義概要>

 楽曲――例えばベートーヴェンの「第九」、ビートルズの「イェスタデイ」、箏曲の「六段」など――にはそれぞれの歴史的背景があります。その曲がどの時代にどこで生まれ、どういう聴衆や演奏環境のために考えられ、そして同時代やそれ以前の音楽に比べて何が特徴で、何が新しかったのか。それを知れば人は自分の時代と自分の国の音楽だけではなく、様々な国と時代の音楽を楽しめるようになります。そして自分自身の時代の音楽の理解も深まります。
 そういう知識を扱う科目は「音楽史」です。音楽史は楽曲の背景であると同時に、楽曲が音楽史の要素でもあります。しかし音楽史を構成する楽曲は必ずしも全ての作品ではなく、一部の優れた作品だけです。では、音楽の作品はどの様に「歴史的な」作品になるのでしょうか。
 簡単にいうと、歴史的な作品は他の作品に影響を与える作品です。作品が優れていても、後の時代の人びとがそれに興味を持ち、そこから影響を受けなければ、その作品が歴史を動かすことができません。つまり、ベートーヴェンの「第九」が作曲された瞬間に歴史的な意味を持ったのではなく、後の時代によって歴史的な作品にされたのです。この歴史的なプロセスは「受容史」とも呼ばれます。この講義では西洋音楽と日本音楽のいくつかの例で、作品がどの様に歴史を成すのかをたどってみたいと思います。

<推薦図書>
岡田暁生 著「西洋音楽史」(中公新書)
カール・ダールハウス 著 角倉一朗 訳 「音楽史の基礎概念」(白水社)

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