<講義概要>
最も簡単な等差数列の和の公式:
1+2+3+…n=n(n+1)/2
は、数学や物理学の科学上の偉人の伝記物語に関連してよく出てくる。Gaussや湯川秀樹の子供時代のエピソードにもあったように思う。この式は高校の数学の定番である。
2乗の和:
1²+2²+3²+…+n²=n(n+1)(2n+1)/6
も多分高校で教わると思う。3乗の和は現在のカリキュラムで教わるかどうか知りませんが、答えは n²(n+1)²/4 となります。さて、ここで
問題:一般の自然数kにたいして、1 から n までのk乗の和はどんなものになるか?
という問いを出します。
答を記号で Sk(n) と書くことにしましょう。勘の良い人は、答はn の (k+1) 次式で、その最高次数の項は n(k+1)/(k+1) になるのではないかと予想できると思います。別に勘が悪くてもかまいませんが。
さらに頑張ると、Sk(n) の n を変数 x で取り替えると、Sk(x) の x に関する微分は、一つ次数の下がった、S(k-1) (x) のk倍になることが分かります。現時点で分からなくとも、気にする必要はありません。さらにSk(0)=0が分かり、つまりは定数項が消えることが分かります。そうするとxに関して一次の項の係数が分かると、kの小さなところから順に全て計算できることが分かります。この係数が普通は「ベルヌーイ数」と呼ばれるものです。
江戸時代の日本人数学者に5代将軍綱吉の家来で勘定吟味役であった、関孝和という人は、ベルヌーイと同じころ独立に研究して、同じような計算の仕方を発見していました(実は数学者のBernoulliは複数います。ここで言う人は Jakob Bernoulli)。関の研究は「括要算法」という、漢文と独自の記号法で書かれた彼の数学書にまとめられています。読み易くないと聞いています。見ても「珍聞漢文」かも知れませんが、幸い英訳もあります。
お話は、「高校の数学+アルファ」で、せいぜい大学1年程度の数学(のごく一部)を用いて、これがほぼきちんと証明できるという筋道を紹介します。使うのは自然対数の基である e という数と、指数関数 ex の展開のみです。多分普通大学でやる教養課程の講義では、このような話はでません。もっと散文的な話が大部分ですが、それを使っても面白い結果が出せるという例のつもりでお話します。
自分で最後まできちんと証明を納得したい人には、文献などはお話するときに言います。
訂正:「5代将軍綱吉」は「6代将軍家宣」の誤りです。お詫びして訂正します。