研究・活動内容の紹介
高校生のための金曜特別講座
東京大学教養学部における高校生を対象とした公開講座は,2002年4月に始まりました.当初は運営を含め全てが教養学部教員のボランティアで実施されていましたが,本寄付研究部門の設置により強力な実施体制が確立し,運営,情報発信,講義内容の公開など多くの面で飛躍的な発展を遂げました.特に,講座のウェブサイト立ち上げにより,講義予定等の情報に加えて過去に行われた講義の要旨,そしてハイライト映像(一部は全編)が閲覧できるようになりました.さらに,地方の高校からの要望に応え,インターネット回線を利用した双方向同時中継により日本全国38校(2007年10月現在)の高校生に教養学部ならではの学問の幅広さ・奥深さを発信しています.なお,これまでの講義内容は書籍化され,順次出版されています.
科学リテラシーの普及
科学技術の進歩は利便性とともに,環境問題や生殖技術の悪用など負の側面も生み出しました.様々な科学技術によって支えられている現代において,科学技術を利用し,山積した課題を解決するためには,科学的な素養の重要性はますます大きくなっています.しかし,現実には理科離れが深刻化しており,幅広い層に科学の楽しさや科学を体験する方法を発信する手段の開発が急務となっています.そこで,本寄付研究部門は,実験開発の第一人者であると同時に理科教育のスペシャリストである滝川洋二氏(NPO法人ガリレオ工房理事長,NPO法人理科カリキュラムを考える会理事長)を客員教授として迎え,NPO法人と連携して,科学リテラシー普及のための方法を研究しています.
中等教育向けの教材開発
中等教育向け教材の第一弾として,高校教員13 名のチームとともに,物理実験DVD『高校物理演示実験・生徒実験集』を制作・配布しました.実験の詳細な手順や特記事項などを豊富な写真やイラストとともにPDFファイルにまとめることで,演示実験・生徒実験が高校教育の中で幅広く,気軽に普及するように配慮した画期的な補助教材です.随所に動画ファイルが埋め込まれ,実際の演示や実験の様子をあらかじめ確認することができます.この物理実験DVDには非常に大きな反響が寄せられたため,DVD所蔵の内容を書籍化したものが,「見て体験して物理がわかる実験ガイド―演示実験・生徒実験集―」として学術図書出版社から出版されました.なお,DVDは,送料のみで配布しています.こちらをご覧ください.
化学,生物学の教材についても順次開発を進める計画が進んでいます.
理想の理科教育
東京大学駒場キャンパスに新設されたアクティブラーニングスタジオ(Komaba Active Learning Studio, KALS)との連携により,IT技術を活用した新しい理科教育の授業モデルを構築することを目的としています.必要情報をインターネットにより迅速に収集,共有できるスキルの向上と同時に,それらに依存することのない自ら考える学習モデルの構築などを想定しています.
2008年の夏休みにKALSを利用した実験教室を開催し,科学の基礎を学びながら身近な現象の中の不思議な側面の探究を試みました.この探究を通じ,実験のテーマの選び方,受け身ではない学び方,研究の仕方の基礎,レポートの書き方などを身につけてもらうことが目標です.今回のテーマは,物理分野.コンピュータ計測や実験開発のアイデアを出し合う中で,身近な現象の中から,高校生に解決可能な課題を探します.今回は,家庭で実験が継続できるような装置を生徒が自分で工夫します.
駒場博物館からの発信
特色ある「駒場博物館」を拠点とした全国への発信を推進し,文理を横断する駒場ならではの「教養」を具体的に展示しています.特に,夏休み期間に子ども向けの理科の企画を拡充し,駒場発の発信を抜本的に強化しました.
★2005年夏「錯覚展」:小学生・中学生など来場者1万人を超え,駒場博物館史上の記録を大幅に更新し,新聞,テレビなどでも話題になりました.視覚の謎を子どもたちにもわかりやすく解説したこの企画は,大学発の社会連携のモデルを切り開いたと言えます.21世紀COE「心とことば」との共催により実施されました.
★2006年夏「小学生からわかる光の世界展」: 物理教育国際会議2006@東京とあわせ開催.当寄付研究部門の滝川洋二客員教授が主導し,NPO法人ガリレオ工房の協力を得て,光を切り口に現代物理学の先端に触れる展示を行ったものです.展示と並行して,実験教室や保護者向けイベント「理科好きな子どもを育てるためには」を開催しました.
★2007年夏「はじめて出会う囲碁の世界」展:2006年10月に新設された寄付研究部門「教養教育への囲碁の活用研究部門」との共同で開催し,囲碁を教養教育に活用するというきわめて斬新な目的を持った企画でした.囲碁の対局中に働く脳の機能を認知神経科学的に解明しようとする切り口もあり,好評を得ることができました.
★2008年夏「進化学の世界−ダーウィンから最先端の研究まで−」展:2009年のダーウィン生誕200周年,および 「種の起源」出版150周年をひかえ,駒場博物館では,2008年夏休み企画として特別展を開催しました。
直島キャンプ
高大連携による新しい教養教育の実践として,瀬戸内海に浮かぶ直島を舞台に「考えること」を体験する機会を提案します.
2007年度の哲学キャンプに続き,2008年度には環境キャンプを開催しました.国内外の高校生21名が集まり,環境問題に関するレクチャー,直島と豊島で稼働している産業廃棄物処理施設の見学,地域活性化活動に取り入れられた現代アートの鑑賞など,多彩なプログラムを通じて環境問題を多面的に捉えることを目的としました.高校生たちは講師との議論や参加者同士でのグループディスカッションによって考えを深め,最終日には環境問題の解決に向けて導き出した意見について発表会を行いました.
高校で行う教養教育特別講座
本講座は教養教育の社会連携を目的として本学教養学部教員が全国の高校に出向いて講義を実施するものです.生徒に対して講義を行うばかりではなく,「教養教育の社会連携」をテーマに高校教員との意見交換会を実施することが本講座の大きな特徴です.これらの活動を通して「15歳からの『学び』の促進」を実践するとともに,高校現場における教育課題の共有によって実状に即した教養教育の提言・発信が可能になります.
これまでの実施状況は以下の通りです.
- 2007年5月18日(土) 岩手県立盛岡第一高等学校
- 講師:下井守(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授)
- 「変な元素,ホウ素の化学」
- 講師:三谷博(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻 教授)
- 「伊藤博文:日本「近代」の光と影」
- 2007年6月16日(土) 長崎県立島原高等学校
- 講師:松田良一(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 准教授)
- 「スーパーマンを救え―再生医学への招待―」
- 2007年9月18日(火) 北海道札幌北高等学校
- 講師:下井守(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授)
- 「変な元素,ホウ素の化学」
- 講師:斉藤文子(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻 准教授)
- 「小説読むべからず――フィクションの魔力――」
- 2007年10月6日(土) 徳島県立池田高等学校
- 講師:トム・ガリー(東京大学教養学部附属教養教育開発機構 特任准教授)
- 「英作文の意味と意義」
- 2007年11月22日(金) 島根県立松江北高等学校
- 講師:藤垣裕子(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 准教授)
- 「科学技術と社会」
- 2007年12月8日(土) 富山県立富山高等学校
- 講師:永田敬(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授)
- 「分子の世界と電子の振舞い−電子は何処で何をしているのか?−」
- 講師:下井守(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授)
- 「変な元素,ホウ素の化学」
- 2008年8月30日(土) 秋田県立秋田高等学校
- 講師:下井守(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授)
- 「変な元素,ホウ素の化学」
- 2008年9月27日(土) 宮崎県立宮崎大宮高等学校
- 講師:後藤則行(東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻 教授)
- 「地球温暖化とはどんな問題?」
- 講師:下井守(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻 教授)
- 「変な元素,ホウ素の化学」
- 2008年12月6日(土) 石川県立金沢泉丘高等学校
- 講師:大越義久(東京大学大学院総合文化研究科国際社会科学専攻 教授)
- 「刑事司法システムの実際」
高校物理の授業に役立つ基本実験講習会
高校の物理教育において,様々な実験を効果的に授業に導入することは,生徒の理解を助ける上で大きな役割を果たします.東京大学教養学部附属教養教育開発機構は,かねてより授業の中で有効に使える演示実験や生徒実験の開発やその普及に努めている物理教育研究会(APEJ)に協力して,DVD付き教材「見て体験して物理が分かる実験ガイド」を作成しました.本講習会では,この教材を利用して,高校物理の基本的な実験を体験するとともに,実験に必要な基礎的技術を実習します.新任教員の方,実験の経験が少なくて苦手意識のある方,実験の準備にあまり時間がかけられない方,また,理科教師を目指している学生の方,奮ってご参加下さい.